太陽系10の天体(ギリシャ神話/ローマ神話)
10個の天体の1つ1つが、人の心の働きを表しており、人格のさまざまな面を表します。性格の特徴は、天体の位置と天体同士の関係によって決まります。占星術では、太陽と月は、光を発するものという意味を持つルミナリーという名称で呼ばれています。この太陽と月も含めて、太陽系の10個の天体と考えます。それぞれの天体に関連づけられた特徴は、次の通りです。
太陽(太陽神ヘリオス/アポロン)
●プラスの影響:生命力、個性、創造力、活力、意志の力、ひらめき、自我の目覚め、自尊心、自己認識
■マイナスの影響:自己中心、尊大さ、傲慢、威圧的
太陽系のエネルギーの源である太陽は、光と活動の力を放っています。占星術では、太陽を、すべての命あるもののエネルギー源の象徴とし、太陽がそれぞれに個性を与えているととらえます。私たちの存在の中核をなし、自我を形成するのです。太陽を表す記号は、中心に点がある円ですが、この点は宇宙の心臓を意味しています。象徴学では、円は無限あるいは永遠を表し、中心の点はある特定の時と場所を表します。意志の力、エネルギー、強さ、自己表現は、太陽から与えられる特性です。また太陽は、野望、誇り、意識、自信を表わし、さらに父親あるいは男性的なものを暗に表します。神話の世界では、王や英雄は、ヘリオスや太陽と関連づけて描かれます。太陽は、しし座の支配星です。
月(月の女神セレネ/アルテミス)
●プラスの影響:繊細さ、子煩悩、感受性、直感
■マイナスの影響:不機嫌さ、神経質、感情的
太陽の光を受ける月は、地球の周りをまわる唯一の衛星であるという点で独特の存在です。
月の影響は、本質的に受容的であり、理性ではなく感情に働きかけます。月は、感情的な要求と直感を表し、水の元素を支配しています。海や潮の干満、そして夜の世界を支配しているのです。
神話では、イシス、イシュタール、アルテミス、ダイアナなどは、月の女神です。昔から、月は女性的なものと結びつけて考えられてきました。またギリシャのガイアという概念と調和しています。直感や霊的な力と結びつけて考えられることも多く、民話や詩、伝説に多く登場します。月の神的な影響は、女性、受胎の周期、受胎、誕生、母、自然の豊潤さなどを通して描かれてきました。
また占星術では、月を無意識の反応や主観的体験を表すものとしてとらえます。また、基本的な欲求を満たしたいという無意識の願望に影響を与えるのも月であるとされています。月は、私たちのさまざまな緊張を受けて、それを外に向けて発散するように働きかけます。また、月は感情の起伏にも影響を与えます。月は、かに座の支配星です。
水星(伝令神ヘルメス/商業と盗賊の守護神メルクリウス)
●プラスの影響:聡明さ、頭の回転の速さ、コミュニケーション能力、豊かな知性
■マイナスの影響:策略家、智恵の不足と過剰、非論理性
神話の世界では、水星は神々の使者マーキュリーです。マーキュリーは、人間に言葉と文字を与え、情報を交換して学ぶ能力を与えました。ギリシャ神話では、ヘルメスの名で呼ばれ、人間に文字と言葉を与えました。マーキュリーは、会話の術に長け、策略家です。これは知性の表れですが、あまり自分のためになっているようには思えません。
若い男性として描かれることの多いマーキュリーですが、実はマーキュリーは男性でもなければ女性でもありません。知識を伝達する中性の仲介者です。マーキュリーは、知性、論理的思考、判断力の象徴であり、また商売に深い関わりがあります。
心理面から見ると、水星は、知能の象徴です。また、話し言葉、文書、教育などさまざまなかたちでの情報交換を求める気持ちを象徴しています。水星は、ふたご座とおとめ座の支配星です。
金星(女神アフロディーテ/ウェヌス)
●プラスの影響:美を愛する心、芸術を愛する心、温かい心、社交性、価値観、協調性
■マイナスの影響:快楽主義、気ままさ、なまけ心、贅沢癖
神話の世界では、金星は愛と美の女神ヴィーナスを表します。ギリシャ神話では、アフロディーテの名で知られています。女性原理の象徴であるヴィーナスは、調和と統一を創造するとともに、自然と芸術を愛します。
ヴィーナスは、人とつながりを持ちたいという気持ち、愛情を表現したいという気持ちを象徴しています。ヴィーナスは、人気者で、魅力にあふれ、人の心を惹きつけますが、気ままでのんきすぎる面もあります。対立を嫌うヴィーナスは、自分の魅力で相手を誘惑し、何としてでも衝突を避けようとします。
ヴィーナスの役割は、調和の実現です。そのため、魅力が重要なポイントになります。外見、社交術、ロマンティックな恋愛、異性などが大きな意味を持ちます。惑星としての金星は、優しい性格、自然を愛する心、強い願望などをもたらします。ヴィーナスが触れると、すべてのものが和やかになり、美を見分ける力、センス、品、芸術的才能、音楽的才能を与えられます。
人の価値観を支配するのもヴィーナスで、お金や所有物、自尊心などを司ります。金星は、おうし座とてんびん座の支配星です。
火星(軍神アレス/マルス)
●プラスの影響:自己主張、勇気、活力、行動力、気力
■マイナスの影響:攻撃性、暴力、粗野なふるまい、怒り、落ち着きのなさ
神話の世界では、火星は闘う神マーズを表します。マーズは、私たちの生存本能を支配しており、私たちはその生存本能に従って逃げるべきか、闘うべきかを判断するのです。マーズは、ヴィーナスとは対象的で、男性原理の象徴であり、競争心が強く、雄弁で、行動的です。マーズは、活力と意欲にあふれています。敵と対峙した時、勇気と力強さを発揮するマーズは、英雄の典型でもあります。勇気ある行動と向こう見ずな性格がマーズの特徴です。現代の社会で
は、マーズのエネルギーは、仕事の成就、目標の達成、信念の確立に影響を及ぼします。
火星の影響は、私たちの生存本能に働きかけるため、体内のアドレナリンの分泌や、機敏に物事に対応する力とも深い関係があります。しかし度を越すと、自己主張と闘争のエネルギーとなっていたものが、不機嫌さ、怒り、攻撃性、いらいらなどへと向けられます。しかし、火星の存在なくしては、私たちの活力、気力、自発性、野心などもあり得ません。火星は、おひつじ座の支配星です。
木星(大神ゼウス/ユピテル)
●プラスの影響:真実を求める気持ち、寛大さ、理想主義、楽観主義、長い旅、高い学習意欲
■マイナスの影響:大げさ、過度の膨張、場違いな楽観主義、強欲
木星は、太陽系の中では最大の天体です。ローマ・パンテオンの支配者に因んでジュピター(ギリシャではゼウス)と名づけられた木星は、神話の世界では、英知、勝利、正義と関係があります。その大きさを保つために、ジュピターは、膨張するかのように実際よりも大きくみせようとします。自分の限界以上の能力、より大きなものを目指す力を象徴し、そのために必要な楽観的な気持ちと最後までやり通す自信を備えています。
物事の持つ意味とより大きな真実を追い求める気持ちは、ジュピターが哲学的に人生と向きあっていることを示しています。多くの知識を求める気持ちは、より高度な教育を意味し、大学や心の師を求める気持ちへとつながっています。さらに正義を象徴するジュピターは、法制度、法廷、法律、規則などと深い関わりがあります。
木星は、知性、感情、精神などの成長と関連づけられているだけでなく、大きな財産や豊かさとも関連づけられています。木星は、多くの経験をしたいという気持ちや遠くの見知らぬ土地へ旅をしたいという気持ちを刺激します。しかし度を越すと、強欲、強すぎる楽観主義、不誠実、過度の自我に結びつきます。木星の最もよい面は、知性と信望。これが理想を現実のものとする力となって表れます。木星は、いて座の支配星です。
土星(時の神クロノス/サトゥルヌス)
●プラスの影響:規律、秩序、権威、責任、智恵、現実主義、忍耐、粘り強さ
■マイナスの影響:悲観主義、恐怖心、過度の制限
神話の世界では、土星は「時の翁」とされるサタンであり、「刈り取るもの」とも呼ばれています。ギリシャやローマの時代には、サタンは、社会秩序を司る神であるとともに練を手にした刈り取る人として描かれ、「蒔いた種は自分で刈り取る」という原則を表しています。またサタンは、完全なる正義、あるいは原因と結果を象徴しています。
心理学的には、サタンは典型的な賢者あるいは教師であるといえます。責任を持つようになり、自己実現の訓練を積むことによって、私たちは年を重ねるとともに賢さも身につけていきます。サタンの影響は、厳しい労働と訓練をもたらしますが、それが唯一の学びの手段であり、
結果的にはとても価値があるものです。境界を作り、それを踏み越えようとしない土星は、外へ外へと拡大しようとする木星とちょうどよいバランス関係にあり、それによって秩序を保つことができています。しかし土星の抑制的な影響は、悲観主義、恐怖心、過度の真剣さなどにつながります。
土星が求めるものは、定義、形式、体制です。統制、規制、安全のために境界線を引きます。
土星は、固いもの、つまり歯や骨などから確固たる意志にいたるまで、固いものすべての象徴です。また、責任と義務を果たすことを私たちに求める土星は、時に不安感や不快感を引き起こします。土星は、あらゆる事柄に対して公平です。働けば働いただけのものが必ず自分の身に戻ってくるということを表しています。土星の影響のもとでは、濡れ手に粟は存在しないのです。土星が与えてくれる決断力と粘り強さがあれば、成功を手に入れることができるでしょう。土星は、やぎ座の支配星です。
天王星(天空の神ウラノス/ウラヌス)
●プラスの影響:自由、人道主義、客観性
■マイナスの影響:反抗、奇行、革命的行動、強情
天王星は、古代ギリシャでは「天」あるいは「夜空」と呼ばれていました。神話では、天王星はサタンの父であるウラヌスです。天の広大さは、宇宙に向かって開く私たちの心の可能性を象徴するものです。土星の拘束と庇護から遠く離れた天王星は、悟りと自由の精神をもたらします。この自由とは、予期せぬ出来事を受け止めるゆとりを持つこと、あるいは圧力を受けても負けずに自分の個性を主張する強さを持つことを意味しています。しかし度を越すと、訳もなく反抗的になってしまう危険があります。
天王星を通して、私たちの視野は広い宇宙へ向けられ、人類は皆兄弟であることをあらためて理解します。天王星は、人類の権利と自己表現の自由を守ってくれるのです。
天王星は、電気的なエネルギーを持つもの、例えば、テレビ、ラジオ、磁場、レーザー、コンピューター、電子技術などを支配しています。天王星は、直感と創作力の象徴であり、常に将来へ向けられる関心と象徴的で抽象的な考え方を表しています。これは社会の先端を行くことを意味し、個性的な方法での自己表現を意味します。天王星は、みずがめ座の支配星です。
海王星(海神ポセイドン/ネプトゥーヌス)
●プラスの影響:敏感さ、展望、思いやり、ひらめき、無限の可能性
■マイナスの影響:幻想、ごまかし、現実逃避、混乱、曖昧さ
神話の世界では、海王星は海の神ネプチューンであり、深淵で、測り知れない神秘さを持っています。まさに波が岩を砂に分解するのと同じように、ネプチューンは、心の周りにはりめ。
ぐらした壁を非常にゆっくりと崩し、私たちを神秘の世界へと誘い出します。海王星を包みこんでいるは、海岸に立ちこめるにも似ており、はっきりとした形もなく、現実のものとも思えず、謎に満ちています。
海王星は、私たちの心を清める働きを持ち、それにより私たちは限界に挑戦することができるようになります。火星と違って、海王星には限界はなく、あらゆるものと一体感を感じることができます。しかし、このあらゆるものと一体になることができる能力は、ある意味では曖味さとなって表れます。極度の感受性の鋭さは、この海王星の影響によるものですが、それは人類の苦難に対する深い哀れみの表れでもあります。また、美術、音楽、演劇などの創造的な活動に没頭する能力をもたらすこともあります。芸術家は、海王星から、ひらめきを得るのです。
感覚と想像力が増幅されると、幻想の世界に迷いこみがちになり、アルコールを乱用したり、自分を欺いたり、あるいは自分を見失ったりしがちです。海王星と向きあい、夢を実現させるためには、自分の展望をしっかりと持つことが大切です。海王星は、うお座の支配星です。
冥王星(ハーデス/冥界の王プルート)
●プラスの影響:力強さ、変革、再生、真実の追究
■マイナスの影響力の乱用、妄想、衝動
神話の世界では、冥王星は冥界の神とされ、変化、死、再生の象徴です。冥王星は、奥深い変化を意味し、そのエネルギーは激しく強力です。冥王星は、身ぶりや手ぶりなどの意識下の動作を通して潜在意識を見通す力を私たちに与えてくれます。これは、深層心理学などの分野で積極的に活用できる能力ですが、悪用すれば人を思い通りに操作することなどもできる能力です。
冥王星が発見されたのと、ほぼ時を同じくして亜原子粒子が発見され、また無意識に関するユングの著作が出版されました。冥王星のエネルギーは非常に強力で、その影響は、テロリストから社会の改革者にまで及びます。
また、私たち1人1人の心の中にも同じような影響を及ぼします。冥王星は、全か無かというような考え方の象徴でもあるのです。よりよいものを求めるためには、過去をふり返らず、未来だけを見つめることも必要です。冥王星は、死と再生を象徴しています。冥王星の力を借りて、私たちは人生の転機を受け止めることができ、いらないものを潔く切り捨てることもできるのです。冥王星は、すべての終わりは始まりの時であるということを私たちに教えてくれます。
その教えに助けられ、私たちは再生をくり返すことができるのです。冥王星は、さそり座の支配星です。